私的幸福論

手紙を書いているとき

私は一応大学でコミュニケーションという、わかったかわからないようなものについて五年ほど(四年で終わらなかった、大学が好きすぎて)学んでいたので、人と人とのコミュニケーションについては多少の知見がある、と自分では思っている。 手紙という通信手…

独りで酒を飲んでいるとき

二十五歳を過ぎた頃から独りで酒を飲みに行くようになった。純粋にひとりだ。当然ナンパなどしないし、マスターとも喋らないし、隣席と仲良くなることもない。ただ、独りで酒を飲み、つまみを食べ、そしてここが重要なのだが、本を読む。 行儀が良くないこと…

銭湯に行ったとき

年に何回か銭湯に行くことがある。休みの日にふらりと行くこともあるし、山登りの帰りに行くこともあるし、友人と何となく行くこともある。そんなに頻繁に行く方ではない。でも私は、銭湯というものが好きである。時々行くくらいがちょうど良いのかもしれな…

寿司を食べているとき

何と言っても人間は美味しいものを食べているときがいちばん幸福で、満たされていると思う。しかし興味深いのは、「美味しいもの」の定義が人によってかなり違うということだ。これは、好きな音楽とか、好きな人の顔のタイプとかより、よほど根源的で、生物…

誰かに贈り物をするとき

べつに死ぬほどお金持ちで、お金が掃いて捨てるほどあるというわけではなく、むしろ月末になると財布の中身が心配になることの方が多いのだが、生意気にも、人に贈り物をしたりするのが好きである。 これは誰かに教えられたわけでも、誰かやたらと私に贈り物…

私的幸福論 はじめに

アランの「幸福論」という本がある。私は、自分が幸福とは反対側の絶望の只中にいると思っている時にこの本を手に取った。 そこに書かれていたのは、決して、幸福になるための方法だとか、心の持ちようだとか、そういった類の言葉ではなかった。 しかし、ア…