一月に読んだ本

○天使の骨(中山可穂) 王寺ミチルシリーズ第二弾。ではあるけれど、もっとあとの中山作品を知っているわたしとしては、うーん、もうひとつ、という印象をはじめに抱いた。どうにも外国、外国人がぱらぱらと軽すぎる感じがある。話もどんどん進んでいっちゃ…

ひとつだけ自慢できること

私は人に自慢できることがあまりないのだけれど、ひとつだけ、ちょっとしたことだけれど、ある。 それは、十五歳の誕生日からずっと日記をつけているということだ。 ほぼ、毎日。 いまの日記帳は、去年の二月一日から使い始めた。 これは一月末まで使って、…

中山可穂の原点 『猫背の王子』

正月、インフルで寝込んでいる間にようやく読んだ一作。 わたしは大抵、気になった作家がいたらそのデビュー作をなるべく早く読むことにしている。しかし中山可穂の場合、デビュー作になんとなく手が伸びず(時間をまたいだ三部作であると知っていたので)、…

小説好きのための中編小説集 中山可穂著 「弱法師」

明けましておめでとうございます。気がつけば2015年。年をとるたびに、一年一年が短くなっていくような気がしている。手帳についている新しい年のカレンダーを眺めてみると、案外一年というのは短いなと思い、すこし溜息をついてしまう。 さて、正月とい…

記憶について

ついこの間、駅のベンチに座って新聞を読んでいると、「本郷くん?」という声がした。紙面から顔を上げてみると、マスクをした美しい女が微笑んで立っていた。 小学校の同級生のMだった。彼女とは大学時代に何度か駅で顔を合わせたが、それでも三年ぶりくら…

書くということについて 2 だれかに当たります

私たちはアナロジーにまみれて生きている。今日もあなたは誰かと話すときに何かのアナロジーを使ったかもしれない。アナロジーを使えば、銀座のホステスを口説くこととナショナルクライアントから仕事を取ってくることは同じことになるし、新聞記者の仕事は…

きょうはちゃんと書く。

小説を書く人、詩を、あるいは音楽を書く人でもいい。それに、漫画や絵を描く人でもいい。プロでも、アマチュアでも何でも良い。そういう人には、「きょうはちゃんと書こう」という日があるはずだ。朝起きた時にそう思うかもしれないし、帰りの電車の中でそ…

村上春樹の三段跳び 「1973年のピンボール」

1973年のピンボール (講談社文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2004/11/16 メディア: 文庫 購入: 13人 クリック: 68回 この商品を含むブログ (286件) を見る 毎年この時期、つまり涼しくなってまわりに風邪ひきが増えたり台風が列島を直…

あまりに個人的な書評 村上春樹著 風の歌を聴け

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」 村上春樹著 『風の歌を聴け』講談社 p.7 風の歌を聴け (講談社文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2004/09/15 メディア: 文庫 購入: 43人 クリック: 461…

ネットを深めるための旅 東浩紀著 弱いつながり

弱いつながり 検索ワードを探す旅 作者: 東浩紀 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2014/07/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (17件) を見る 弱いつながり 検索ワードを探す旅 作者: 東浩紀 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2014/08/01 メディア: K…

誰もしないことをやっちゃった! 高野秀行著 西南シルクロードは密林に消える

西南シルクロードは密林に消える (講談社文庫) 作者: 高野秀行 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2009/11/13 メディア: 文庫 購入: 3人 クリック: 20回 この商品を含むブログ (16件) を見る 西南シルクロード? 密林? しかも消える?? タイトルからして謎…

怪奇小説のマスターピース 夢野久作 瓶詰地獄

瓶詰の地獄 (角川文庫) 作者: 夢野久作 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング 発売日: 2009/03/25 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 30回 この商品を含むブログ (27件) を見る 瓶詰の地獄 (角川文庫) 作者: 夢野久作 出版社/メーカー: KADOKAWA /…

さわやかな青春小説 加納朋子著 少年少女飛行倶楽部

少年少女飛行倶楽部 (文春文庫) 作者: 加納朋子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2011/10/07 メディア: 文庫 クリック: 12回 この商品を含むブログ (21件) を見る 少年少女飛行倶楽部 作者: 加納朋子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2009/04 メディア…

心の内側と外側について

佐渡裕という指揮者が興味深いことを言っている。誰かの受け売りの可能性はあるが、曰く、「感動する」ということは、「感じて動く」ということなのだと。実に彼らしい言葉のように思う。佐渡という人は常に感じて動いて来た人物だ。ブザンソンで賞を取り、…

事実は小説より奇なり 大平健著 顔をなくした女ーー<わたし>探しの精神病理

顔をなくした女―〈わたし〉探しの精神病理 作者: 大平健 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1997/01/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 顔をなくした女―〈わたし〉探しの精神病理 (岩波現代文庫―社会) 作者: 大平健 出版社/メーカー: …

ポーランド脱出

台風11号のせいで陰惨な気分で盆休みを迎える方も多いのではないだろうか。私も明日の予定が中止になってしまった。特に西日本に住んでおられる方は、今週末の予定を変えざるを得ない状況に追い込まれているものと想像する。 NHKでJALやJRのキャンセルにつ…

人はなぜ自分の思考を疑うのか?

共時性(synchronicity)という言葉がある。ユングも真っ青になるほどざっくりした説明をすると、要するに、「偶然はただの偶然じゃないんだよ」ということである。何かしらの法則、意識の外側の力があるということらしい。 ごく手近な例をひとつ挙げてみる。…

思い出のマーニー

「思い出のマーニー」劇場本予告映像 - YouTube 「崖の上のポニョ」以降、ジブリの映画はことごとく映画館で観ているのだが、今回も公開されてすぐに観に行った。一人で行くのはちょっとさみしかったけど・・・。 どういう感想を持ったかというと、「これは…

マレーシア航空について

親ロ派武装勢力、国際調査団受け入れ マレーシア機墜落:朝日新聞デジタル 今年三月のMH370便の事故もショッキングだった。しかも未だに機体は見つかっていない。つまりMH370便に乗っていた方々の家族も宙ぶらりんの状態に置かれている。 そこに来て今回のMH…

絵葉書これくしょん

そういえば私は絵葉書収集が趣味なのです。 そんなわけで少しずつ公開していきますよ。準備はいいかい? 定番。 いいよなあ・・・北海道・・・。 さてこれはどこでしょう? これだけで分かったらすごい。 そうです。アウシュビッツです。 ポーランド、クラク…

アラン幸福論 5.憂鬱

昔のことだが、腎臓結石で苦しんでいる友人と話したことがある。彼はひどく落ち込んでいた。こういった種類の病気は人を悲しくするものだ。私がそのことを言うと、彼はそれに同意した。そこで私はこう結論づけた。 「こういう病気が人を悲しくさせる、きみは…

Painting By Chagall The Weepies ウィーピーズ 英詞&訳詞

ホントにウィーピーズの曲好きだわー。 というわけで我流で訳してみました。正しさは全然自信ないです。 The Weepies - Painting By Chagall - YouTube * Thunder rumbles in the distance, a quiet intensity遠くで雷がゴロゴロと鳴っている ひっそりとし…

血液型について

AB型である。私がである。大変なことである。オチがないと死んでしまう病に取り憑かれた大阪人に囲まれて育った私は、幼少の時からAB型というだけでオチに使われてきた。彼らはサッカー日本代表みたいにパス回しだけで90分を終えるということがない。絶対…

良い演奏のためには

むかし外国でアマチュア吹奏楽団に所属していたことがある。ひょんなことから見つけたその市民楽団に私は入り、たったひとりの日本人、というかたったひとりの外国人として演奏活動を行っていた。当然のことながら、最初はかなりびびりながら練習に行ってい…

何かを発見するとき

一人で旅をしはじめたのはいつだったろうか。一人でどこかへ旅をすると、新しい何かを自分に付け加えられたような気持ちになれる瞬間がある。私たちはなぜ旅をすることで閃いたり、気づいたり、見つけたりした気になれるのだろうか? 生まれて初めて、一人で…

外国語を学ぶということについて

マレーシアで生まれて初めてトランジットを経験した時のことである。クアラルンプールの空港で、六時間後のフライトまで何もすることがなく、私はソファに深く身を沈めてただぼおっとしていた。右から左へ、色々な顔の人がゆく。色々な言葉が聞こえる。その…

外国で生活することについて

留学生のルーツをたとえば空海と最澄に求めることは無理のある議論だろうか。かつてこの国では留学生ではなく留学僧(るがくしょう)という存在があった。留学僧はおよそ二十年のスパンで中国に住み、そこで勉強して帰国してからは国の根本のところで教えを…

読むということについて

読むという行為は、おそらく書くこと以上に、日常的に行われていることなのだが、深く考え始めると不思議な行為であることが分かってくる。私たちは読みながら(あるいは書きながら、でもあるのだが)自分自身の中にある内なる存在、その声を聴いている。そ…

書くということについて

私は自分の音楽的才能に関しては多少の自信を持っている(それは過去の実績から来るものだ)が、文学的才能などというものは微塵も信頼していない(つまり実績が無いということだ)。いずれにせよ、何かをする時(楽器を演奏したり、小説を書いたり、あるい…

音楽について

私が大学生の時、しばらく日本を離れることになったことがある。私は大学のオーケストラに所属していたのだが、離れ離れになってしまう後輩たちのために、私なりに音楽について考えたことを書いた一冊のノートを残した。その中でもずいぶん音楽のことを書い…