これだけは言っておきたいフランス語のこと カタカナ語にもの申す

 自分で言うのも相当アレだが、今日は、これからかなり有益なことを書く。といっても、このブログ自体、ほとんど誰も読んでいないし、そもそも私のペンネームで書いているので、実際の知り合いが読む可能性はまったくないブログだ。しかしアクセス解析なんかを眺めていると、どうやら特定の記事に読者が集中する傾向があることがわかった。

 

 それはフランス語についての記事だ。そういうわけで、フランス語について、前々から「これだけは言いたいんだけどなあ……」と思っていたことを書く次第である。今日久しぶりにベルギー人の友人と京都で会って、フランス語を話していたので思い出したのだ。「そういえばこの記事を書きたいと思っていた」と。

 

「そうは言うけど、お前、どんだけフランス語話せんねん」と思ってる方もいらっしゃるだろう。私は、DELFでいうとB2という資格を持っているが、まあ、普通に話せるが、専門家やネイティブほどじゃないというくらいのレベルを想定していただければ結構である。ちなみに昔、とある教育機関でフランス語を教えていたこともある。

 

 さてそれでは本題だ。書くのは、鼻母音についてだ。

 鼻母音、ビボイン、何か危ない薬みたいな単語だが、フランス語をちょっとかじったことのある人なら知っているはずだ。

 有益なことを書くと言ったが、ほとんど愚痴のようなものである。しかし、繰り返し言うが、相当に有益ですよ、これは。

 

 鼻母音について書くのだが、鼻母音のことは忘れて欲しい。私は、この鼻母音という単語の持つ不思議な誘惑が、フランス語学習の障害になってはいないかと思うのだ。

 

 

 たとえば、

 

 

 

 

 

 

 en

 

 

 

 

 

 

 というつづりがある。さてこれをフランス語で何と読むだろうか。「エン」と読みたいところだが、それでは転職サイトだ。「イン」それは英語の読み方ですね(関係ないが英語の発音規則は結構不思議ですよね)。

 

 

 

 さて正解は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と思った方が少なからずいるのではないのだろうか。

 そこである。そこに私はもの凄い疑問を抱いているのである。

 

 はじめにはっきりとスタンスを明かしておくが、これは、

 

 

 

 

「オン」

 

 

 

 

 と読むべきだし、そう表記すべきだと思っている。

 だがなぜか、これは「アン」と発音することになっている、というか、そのような単語が溢れている。

 

 たとえば有名なフランス語「ensemble」いってみましょう。

 

 

 

 

 もちろん、

 

 

 

 

「アンサンブル」と読んでしまう。

 

 アンサンブルというと、音楽の世界でいうと小さな編成のことを言うが、服飾の世界でも確か何かあったように思う。意味は、英語の「together」つまり「一緒に」という意味だ。

 

 疑り深い人は、youtubeか何かでフランス人が喋っているところを見てみてほしい。あるいはフランス映画でもいい。この単語はフランス語話者なら一日に三回は発するはずだから、絶対に聴けるはずだ。

 

「アンサンブル」ではなく、

 

オンソンブル」と言っているところを。

 

 そう、実はこの単語は二つの間違った「アン」の音があるのだ。

 

    ensemble

 

 

 というわけですね。

 

 と、ここまで書いて「もしかしたら他に気づいている人がいるのでは」と思い、「オンソンブル」で検索してみた。するとなんと鹿児島の雑貨屋さんでちゃんとこの表記にしているところがある。いやあ、すごいですね。店主はきっとちゃんとフランス語を話せる人なんでしょう。

 

 思いつく限り挙げてみよう。

 

 

 encore

 

 

「アンコール」ではなく「オンコール」になるわけである。

 これは英語の「not yet」のyetに当たる単語なので、これもフランス語のインタビューなり何なりで容易に発見できるでしょう。

 

 

 entrée

 

 

 前菜である。これは「アントレ」と書いたりするが、やはり「オントレ」になる。

 

 まだまだあるよ、

 

 

 printemps

 

 

 お店の方には申し訳ないが、「プランタン」もうめちゃくちゃである。

 「プラントン」がより正確な発音。

 ちなみに意味は「春」である。

 

 

 ちょっと専門用語っぽいのだと、

 

 

 

 resentiment

 

 

 

 これが「ルサンチマン」になってしまうわけだ。正しい発音は、もうお解りですね、「ルソンモン」というわけだ。

 

 

 

 なぜそもそもこの発音ーーいわゆる鼻母音のenなりemなり―—が、「アン」と発音されるようになったのか、そしてそれがカタカナ語としてまかり通ってしまったのか、それは残念ながら私には分からない。

 

 しかしこれは割合オフィシャルな見解のようで、その証拠に、私の手元にある文法書にあるアクセントの説明はこのようになっている。

 

 accent

 

 

 が、

 

 

「アクサン」

 

 

 と記されているのである。

 もちろん正しい発音は「アクソン」になる。

 

 というか、どうも、このことに疑問を抱く人が少ないようだ。実際、かつて私の同僚だったフランス語講師(日本人)も、堂々とemploi(雇用)のことを「アンプロワ」と発音していた……。

 

 もしフランス語を勉強している人がこれを読んでいたら、明日から「ensemble」を「オンソンブル」と読んでください。京都の三条の商店街通り抜けたとこにある薄暗いカフェは「カフェ・アンデパンダン」ではなくて「カフェ・アンデポンドン」です。(今でもあるのかな)

 

 その方がフランス語の発音としてはより正しいです。まあ正直、「アンサンブル」でも多分通じます。そう、言葉なんてそんなもんで、余裕で通じちゃうんです

 

 しかし、しかしですよ、

 

 鼻母音はありとあらゆる単語に潜んでいる、別に特別でも何でもない音。それだけに、このコツをおさえていると、フランス語の上達のスピードは間違いなく上がる。他にもちょっとしたコツがいろいろあるのだけど、それはまたの機会にしたいと思う。いっぺんに書くと、教科書みたいになってしまいますからね。

 

 

 

 しかし、ここまで書いて思ったが……。

 

 

 

 

 

 

 

 あるいは私の耳がおかしいのだろうか……。