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私的幸福論 はじめに

 

 

 

 アランの「幸福論」という本がある。私は、自分が幸福とは反対側の絶望の只中にいると思っている時にこの本を手に取った。

 

 そこに書かれていたのは、決して、幸福になるための方法だとか、心の持ちようだとか、そういった類の言葉ではなかった。

 

 しかし、アランの巧みな考察、理知的でありながら重厚になることのない、軽妙な語り口(いかにもフランス的だ)に、励まされるというのではないにしても、ずいぶん心の重荷を軽くしてもらった気がする。

 

 私がこれからここに(私的幸福論というカテゴリーで)書いていこうと思っているのは、アランのアプローチとは少しちがう幸福論だ。「論」というほど、立派なものでもない。ただ、人生で幸福を感じる時のことを、並べていこうという試みだ。

 

 しかし、そういった本も(これは本ではないけれど)あまりないような気がする。もし、いくらか文章が溜まってくれば、そこにはある種の幸福の総体のようなものが浮かび上がってくるのではないか……そんな気持ちで、書き始めようと思っている。