村上春樹 新作 「ドライブ・マイ・カー」を読む

村上春樹さん新作短編は「ドライブ・マイ・カー」:朝日新聞デジタル

 

先日のエントリでご紹介した「ドライブ・マイ・カー」、今日文芸春秋買って読んだ。

 

村上春樹好きにも色々タイプがあると思うのだけれど、私なんかは村上春樹から読書が始まったので、幸か不幸か、村上春樹の作品と言うのがひとつの基準になっているし、一番好きな作家の一人でもある。

だから、新作が出るたびに全部読んでいるし、過去の作品も小説に関して言えば全て読んでいる(はずだ)。

 

で、今回の作品だが、短編である。短編集のひとつに入るくらいのサイズで、だいたい25分くらいあれば読めると思う。

短編の割には色々と設定が揃っているので、単なる短編として終わる作品ではなく、「蛍」とか「ねじまき鳥と火曜日の女たち」みたいに、後に長編につながるものかもしれない。

あるいは逆に、「国境の南、太陽の西」が「ねじまき鳥クロニクル」から生まれたように、この作品は長編を書く際で生まれた作品なのかもしれない。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」との比較を試みる人は、たぶん多いだろう。

 

まぁでもそんなことをとりあえず抜きにして、楽しめる作品だった。

雰囲気は「国境の南、太陽の西」を少し彷彿させるところがあって、私の好きな作品の感じだった。

あらすじなんかを言ってしまうと面白くないので書かないが、ずいぶん静かな小説だなぁという気がする。

昔の村上春樹の作品のような壮大なスケールも、激しい葛藤も見当たらない。でもそれでも、重いテーマを扱った作品であることに変わりない。平易な文体ではあるが、相変わらず難解な物語でもある。ただ、小説が静かになっている。

多分作家の(あるいは作曲家の)晩年の作品のひとつという雰囲気がこの作品からは感じ取られる。

 

しかし私としては、まだまだ長編を書いてもらいたいなぁと思うわけです。

きっと書きたいテーマは山ほどあるだろうから。まだ「カラマーゾフ」のような小説を彼は書いていない(ギャツビーは訳してしまったが)、と私は思うので。