イニシエーション・ラブ 乾くるみ著

 

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 

 

この間知り合いの女の子と飲みに行った時に薦められた本。

私もたいがい酔っ払いながら話を聞いていたから、「代打で合コンに参加した男の子話」くらいの事前情報しかなかった。タイトルからすれば恋愛小説なのだろうと思い、キンドルで読み始めた。

 

バブル時代の恋愛小説かあ、などと思いながらさくさく読んでいた。私が物心ついていたころにはもうバブルが崩壊していたし、この話はどうやら私が産まれる前の話なんだろうなあと思いながら読んでいた。

関係ないけど、バブルの頃のCMとかドラマとかが私は病的に好きである。あのやたらと華美な服装とか、特に季節は冬がいいな、なんかこう、平和だよね。今ではもう古びてしまった女性の派手な化粧とか、ブランドを強調した服とかアイテムとか、シンプルというものが尊ばれる前の時代の空気みたいなものが好きである。自分では絶対に着たいと思わない服とか、行きたいと思わないお店とかも、眺めているだけなのがすごく好き。女性の太い眉毛とか真っ赤な口紅とかもね。ああ、こういう時代に俺は産まれたたんだなあと思うわけです。実際私が生まれた年というのがバブルの絶頂にあった年で、株価がエライことになっていた時代なんですよね。

そういう空気を感じながらぼんやりと読んでいました。

恋愛小説としてはありがちといえばありがちなんだけど、まあそれなりに感情移入したりして読んでました。何より時代の空気感みたいなのが好きだから読めたんだと思う。恋愛小説って読んでると何でも勝手にドキドキしてしまう性質なので、作者からしたら私は随分楽な読者だと思う。

 

後編になって、この話はどうなるんだろう、まあ、ヒロインが病気になったりなんかして死んじゃう系の話かな、どうせ最後は外国に行って綺麗なところで遺灰を撒くか何かして、彼女の残した何かが部屋に残っててうんたら、みたいな話かなと思っていた。案の定堕胎の話が出てきて、うんまあ、恋愛経験の浅そうな女の子(失礼ですが)が薦めてくる小説だからこんなものだろう、とりあえず全部読むか、みたいな感じになった。

 

で、読み終えた。

実は色々書こうと思ったのだが、何を書いてもだめである。もしこれから読む人がいるとすれば、私は何も書かないほうがいい。せいぜいここまで。

私はたぶん、一番いい状態でこの本を読んだ読者の一人だろうと思う。

害のない恋愛小説としてこの本を読むのが正解である。

読後にネットで色々調べたところ、何か本の帯に(今はどうか知らないが)色々と推薦コメントが書いてあるらしい。

私は幸い布団の中でぼんやりしながらダウンロードしたので、本の帯はもちろんないし、レビューも読まなかった。今思えば、レビューを読んでから買ったらつまらなかっただろうな。

それも、読んじゃだめ。

これは、恋愛小説です。

私は今度からそう言って知人にこの本を薦めてみようかと思う。