電子書籍と紙の本2
電子書籍、消える蔵書 企業撤退で読めなくなる例も データ、所有権なし:朝日新聞デジタル
先日、アマゾンでカート・ヴォネガットの作品をいくつか購入した。
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/02/25
- メディア: 文庫
- 購入: 28人 クリック: 109回
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どれもすばらしい作品である。次々にヴォネガットの代表作を、書店に行かずとも読んでしまったわけだ。
しかし、私は結局、これらの作品をブックオフオンラインでまた買ってしまった。
なぜか。よく分からない。
しかし、気に入った本というのはどうしてもモノとして欲しくなるものである。
読書を趣味とする人ならば、本の貸し借りというのを行ったことはもちろんあると思う。私も結構そういうのが好きなほうで、電子書籍の欠点はそれができないことだ。
そういうわけで、古本を買ったとはいえ、それだったら初めから古本を買ったほうが良かったわけである。
そんなことをする人がどのくらいいるのかわからないが、私はこの心理が自分でもうまく説明できない。正直もったいない気がしなくもない。「馬鹿じゃないの」と思う人もいるだろう。
それで今日、冒頭の朝日新聞の記事を読んだわけである。
アマゾンが倒産するとかそういうことは(とりあえずしばらくは)ないと思うのだが、実際に購入したコンテンツが、会社の事業打ち切りによって手元から消えてしまうことがあると言う。
しかも、ダウンロードしたコンテンツは、購入したとはいえ、「条件付のレンタル」に過ぎないらしい。これは怖い。もう私のキンドルアプリの中には百冊を超える本が入っているのである。
私は一度これを経験した。
確かアンドロイドのアップデートのときだったと思うけど、アプリからログアウトされてしまったのである。それでログインしなおしてみると、データが全部消えていた。
当然あせった。しかし何度更新してみても、今まで購入した書籍が戻ってくる気配は無い。
Googleストアに行ってキンドルアプリのレビューを見ていると、同様の状況にある人が少なからずいることを知った。
私はアマゾンのカスタマーサービスに連絡して、しばらくすると電話がかかってきた。
それで、サービスの方に状況を説明して、試行錯誤してみたものの、一向にコンテンツは戻ってこない。何らかの手違いで消えてしまったのかと私は思っていた。
するとカスタマーサービスのお姉さんが、「日本のアマゾン以外のアカウントをお持ちではないですか」と言った。
そういえば、フランスに居たときにもアマゾンを利用していたのだった。Amazon.frのアカウントがあったのだ。そしてそのアカウントに登録していたアドレスは、日本のアマゾンに登録していたアドレスと同じ。パスワードは日本のものと一文字違いだった。
つまり、私はアップデートに伴う再ログインののときに、間違ってAmazon.frのパスワードを入れてしまったらしい。
そんなわけで、日本のアカウントに無事ログインし直し、百冊くらいの本たちは私の手元に戻ってきたわけだ。
電子書籍の弱点というのは、こういうところにある。
手元にあると思っていても、実際には手元にないのだ。
私たちが読んでいる電子書籍は、ある種の虚像と言ってもいいかもしれない。
そうは言っても、電子書籍はとてつもなく便利である。
最近は半身浴の際に、ジップロックにネクサス7を入れて読んでいる。
紙の本だと湿ってしまい、変形してしまったりすることがある。
弱点と強みを織り込み済みで使うのが賢いのだと思う。
しかし、電子書籍で持っているのに紙で買ってしまう心理は、いまだにうまく説明できない。やっぱりモノにこだわるのが人間なんだなあという気がしなくもない。