一月に読んだ本
○天使の骨(中山可穂)
王寺ミチルシリーズ第二弾。ではあるけれど、もっとあとの中山作品を知っているわたしとしては、うーん、もうひとつ、という印象をはじめに抱いた。どうにも外国、外国人がぱらぱらと軽すぎる感じがある。話もどんどん進んでいっちゃう。
だいたいにおいて、三部作の二番目というのは地味な印象になるのだとは思うけど。
しかし、この作品はべつに三部作の二作目として書かれたわけではないのだろう。しかし単作としては……「?」な感じで読み進めたが、最後はやっぱり良かったなあと思わせてくれた。最後のシーン、ほんとに目に浮かびます。やっぱり「続き」は念頭にあったんでしょうね。
怪作。何がいいって、センスがいいんでしょうね。トリックや謎解きに関しては、麻耶雄嵩『蛍』『鴉』あたりを読んでいたことがワクチンになっていて、はじめのほうではっきり判ってしまった。
でも著者によると、だいたい半分くらいの読者がトリックに気づくと想定していたそうだ。ふつう、推理小説を読んでいて、トリックに気がついてしまえば、あとの読書は消化試合になりがちだが、この小説はそうはなっていない。それがセンス。
そのセンスは何かというと、一言でいえば、ユーモアということになってしまうのだと思います。ブラックユーモアというのかな。すらすらと読んでいくなかに、どきりとする一文があったりする。ミステリは謎解きを描くのではなくて、人間というもの自体のミステリを描くものなんですよ、なんてことを思った作品。
ド文系かつ文化系のわたしとしては割合ツボにはまった作品。舞台は高校で、「古典部」なる部活動の活躍(?)を描いた作品。現代的な少年である主人公の省エネ志向というキャラ付けが、じつは作品を通しての赤い糸になっているというのも面白かった。
いわゆる日常の謎を扱った作品で、ジュブナイルとしても読めるし、もちろんミステリだし、でもみじかいビルドゥングスロマンという気もする。印象としては加納朋子さんの『ななつのこ』を読んだ時の印象に近く、たいへんさわやかに読めた。
タイトルでもあり、作中のキーワードでもある「氷菓」の由来については、評価の別れるところである……なんてね。アニメ化とかもされたらしいです。
○黄金色の祈り(西澤保彦)
ミステリ作家である西澤保彦の「自伝的」作品と言われているが、これは実に深い作品。
キーワードは欺瞞ということになるのだろうけど、(こういうと浅く聞こえるが)人間の内面をえぐりにえぐった作品なので、プライドの高い人間が読めば不快になるだろうし、鬱々としている人間が読めばさらに首を締めることになるかもしれない。「かゆい」では済まないくらい鋭く突き刺さった。
個人的なことを言えば、主人公の吹奏楽部での日々やら、留学生活やら、モノを書き始めるとこやらが、何とも自分と重なって、重なりすぎて変な気持ちになった。
ちなみにわたしはキンドルで読みました。電子書籍、いいですよ。
とまあ一月はこんな感じで、今読んでいるのはコレ。
面白い小説、見つかりますかね。