銭湯に行ったとき

 

 

 年に何回か銭湯に行くことがある。休みの日にふらりと行くこともあるし、山登りの帰りに行くこともあるし、友人と何となく行くこともある。そんなに頻繁に行く方ではない。でも私は、銭湯というものが好きである。時々行くくらいがちょうど良いのかもしれない。

 

 いつだったか、大阪か京都のどこかの銭湯に寄った時に、サウナの横に、こんな意味のことが書いてある看板が掲げてあった。

 

・サウナは、食欲を亢進させます

 

・サウナは、ダイエットに効果があります

 

・サウナは、腰痛を治します

 

・サウナは、疲労回復に効果があります

 

・サウナは、睡眠の質を向上させます

 

・サウナは、血行を促進し、肌にツヤを与えます

 

 他にもまだあったと思うが、だいたいこういった意味のことが、箇条書きで連ねてあった。湯船に浸かりながらこの看板をぼんやりと眺めていた私は、およそ人生で悩むことのほとんどが、サウナに入ることによって解決されてしまうのではないかと錯覚した。

 

 体の汚れを落としてから、掛け湯をし、お湯をたっぷりと張った浴槽に身を鎮める瞬間、世界と溶け合うようなあの感覚が私は好きだ。家の風呂おけでも似たようなことはできるのだろうが、銭湯に行き、「わざわざ」金を払って湯を買うというあの一連の儀式なくしては、あの解放感は味わえぬのだろうと思う。

 

 何もかも忘れて湯の中に身体を預けているとき、私の魂はやはりある種の幸福を噛み締めているのだと思う。