人はなぜ自分の思考を疑うのか?

共時性(synchronicity)という言葉がある。ユングも真っ青になるほどざっくりした説明をすると、要するに、「偶然はただの偶然じゃないんだよ」ということである。何かしらの法則、意識の外側の力があるということらしい。 ごく手近な例をひとつ挙げてみる。…

思い出のマーニー

「思い出のマーニー」劇場本予告映像 - YouTube 「崖の上のポニョ」以降、ジブリの映画はことごとく映画館で観ているのだが、今回も公開されてすぐに観に行った。一人で行くのはちょっとさみしかったけど・・・。 どういう感想を持ったかというと、「これは…

マレーシア航空について

親ロ派武装勢力、国際調査団受け入れ マレーシア機墜落:朝日新聞デジタル 今年三月のMH370便の事故もショッキングだった。しかも未だに機体は見つかっていない。つまりMH370便に乗っていた方々の家族も宙ぶらりんの状態に置かれている。 そこに来て今回のMH…

絵葉書これくしょん

そういえば私は絵葉書収集が趣味なのです。 そんなわけで少しずつ公開していきますよ。準備はいいかい? 定番。 いいよなあ・・・北海道・・・。 さてこれはどこでしょう? これだけで分かったらすごい。 そうです。アウシュビッツです。 ポーランド、クラク…

アラン幸福論 5.憂鬱

昔のことだが、腎臓結石で苦しんでいる友人と話したことがある。彼はひどく落ち込んでいた。こういった種類の病気は人を悲しくするものだ。私がそのことを言うと、彼はそれに同意した。そこで私はこう結論づけた。 「こういう病気が人を悲しくさせる、きみは…

Painting By Chagall The Weepies ウィーピーズ 英詞&訳詞

ホントにウィーピーズの曲好きだわー。 というわけで我流で訳してみました。正しさは全然自信ないです。 The Weepies - Painting By Chagall - YouTube * Thunder rumbles in the distance, a quiet intensity遠くで雷がゴロゴロと鳴っている ひっそりとし…

血液型について

AB型である。私がである。大変なことである。オチがないと死んでしまう病に取り憑かれた大阪人に囲まれて育った私は、幼少の時からAB型というだけでオチに使われてきた。彼らはサッカー日本代表みたいにパス回しだけで90分を終えるということがない。絶対…

良い演奏のためには

むかし外国でアマチュア吹奏楽団に所属していたことがある。ひょんなことから見つけたその市民楽団に私は入り、たったひとりの日本人、というかたったひとりの外国人として演奏活動を行っていた。当然のことながら、最初はかなりびびりながら練習に行ってい…

何かを発見するとき

一人で旅をしはじめたのはいつだったろうか。一人でどこかへ旅をすると、新しい何かを自分に付け加えられたような気持ちになれる瞬間がある。私たちはなぜ旅をすることで閃いたり、気づいたり、見つけたりした気になれるのだろうか? 生まれて初めて、一人で…

外国語を学ぶということについて

マレーシアで生まれて初めてトランジットを経験した時のことである。クアラルンプールの空港で、六時間後のフライトまで何もすることがなく、私はソファに深く身を沈めてただぼおっとしていた。右から左へ、色々な顔の人がゆく。色々な言葉が聞こえる。その…

外国で生活することについて

留学生のルーツをたとえば空海と最澄に求めることは無理のある議論だろうか。かつてこの国では留学生ではなく留学僧(るがくしょう)という存在があった。留学僧はおよそ二十年のスパンで中国に住み、そこで勉強して帰国してからは国の根本のところで教えを…

読むということについて

読むという行為は、おそらく書くこと以上に、日常的に行われていることなのだが、深く考え始めると不思議な行為であることが分かってくる。私たちは読みながら(あるいは書きながら、でもあるのだが)自分自身の中にある内なる存在、その声を聴いている。そ…

書くということについて

私は自分の音楽的才能に関しては多少の自信を持っている(それは過去の実績から来るものだ)が、文学的才能などというものは微塵も信頼していない(つまり実績が無いということだ)。いずれにせよ、何かをする時(楽器を演奏したり、小説を書いたり、あるい…

音楽について

私が大学生の時、しばらく日本を離れることになったことがある。私は大学のオーケストラに所属していたのだが、離れ離れになってしまう後輩たちのために、私なりに音楽について考えたことを書いた一冊のノートを残した。その中でもずいぶん音楽のことを書い…

私信 夢我システム様へ

『警視庁警察官 ~深夜の銃声~』 夢我システム 作 御作、拝読いたしましたので、感想など記させていただきます。 私は二度読みました。 まず全体的な感想としましては、ひとつの物語として独立した魅力を持っているものの、前半部分(「私」が女を抱きとめ…

女のいない男たち 村上春樹

村上春樹さんの短編集発売:朝日新聞デジタル 扉を開き、物語の迷宮へ 村上春樹さん新短編集レビュー:朝日新聞デジタル 各所で話題になっていますが、村上春樹の新作短編集が発売になりました。 早速読みましたので、まず全体について極力ネタバレ抜きでざ…

しょっぱい小説 重松清 「とんび」

高校生の時担任の教師に薦められて「その日のまえに」を読んだのが私と重松清の出会いだった。 その時ちょうど村上春樹の「ノルウェイの森」を読んでいて、「その日のまえに」とは随分違う作風なのだけれど、どちらも結局は人の死を、それも愛する人の死を扱…

アラン幸福論 4.神経衰弱

Tetsugakudou Park_14 / ajari さて、アラン幸福論の訳も第四回まで進みました。 今回のテーマは「神経衰弱」です。前回の「哀しいマリー」とも通じる話です。 少し寒い天気が続きますが、もしかすると春にぴったりなテーマかもしれませんね。 過去のエント…

人生のごった煮 サイダーハウス・ルール ジョン・アーヴィング

さて、ジョン・アーヴィングのサイダーハウス・ルールをご紹介しましょう。 アーヴィングというのは現代アメリカの小説家の中で最も重要な一人と言っても良いでしょう。彼自身はディケンズを尊敬すると言っていることからも分かるように、いわゆる現代的な小…

世界を滅ぼす言葉 伊藤計劃 「虐殺器官」と「ハーモニー」

最近立て続けに伊藤計劃さんの「虐殺器官」と「ハーモニー」を読みましたので、その感想など。 世界を滅ぼす言葉 「虐殺器官」 「虐殺器官」というタイトルからして、何やら血なまぐさい話かなあと思っていたのですが、多少は血なまぐさかったですが、「言葉…

西岡兄妹 自選作品集 地獄

以前、西岡兄妹の「神の子供」を紹介しました。あれは言ってみれば長編のひとつの作品でしたが、今回は短編集です。 この作品集「地獄」には、表題作の「地獄」を含む十二編が収録されています。 書き下ろしの一作品を除けば、どれも90年代に発表されたもの…

フランス語学習のためのウェブサイト5選

Studying / Skakerman 語学学習というのは、独力では難しいものがあります。 話せるようになるには、まず読める必要があり、読めるようになるには、正しい文法の知識が必要です。文法には原則と例外があり、これらを体得するには相当量の演習が必要です。も…

アラン幸福論 3.悲しいマリー (Marie triste.)

さて、アラン幸福論も第三回まで訳して参りました。 今回は内容も分かりやすく、フランス語も平易なので、学習にはうってつけかなあと。 フランス語を勉強されているかたは、ぜひ原文と対照させて読んでみてください(私が大分荒っぽく訳しているのがばれそ…

村上春樹新作 『木野』 を読む

というわけで、読んでみました。いち村上春樹ファンとしては新作が出たらすぐに読みたいところ。 その男はいつも同じ席に座った。カウンターのいちばん奥のスツールだ。 お、来ましたね、という感じ。スツールですよスツール。 私が初めて村上春樹を読んだの…

レター教室 三島由紀夫著

手紙を書く人が減れば減るほど、その行為はとくべつなものになっていくだろう。 三島がこの作品を書いた時代に比べて、今は手紙を書く人は少なくなってしまったに違いない。 私くらいの世代では、もはやメールさえ廃れている。仕事で電子メールを使うことは…

電子書籍と紙の本2

電子書籍、消える蔵書 企業撤退で読めなくなる例も データ、所有権なし:朝日新聞デジタル 先日、アマゾンでカート・ヴォネガットの作品をいくつか購入した。 タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF) 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,浅倉久志 出版社…

イニシエーション・ラブ 乾くるみ著

イニシエーション・ラブ (文春文庫) 作者: 乾くるみ 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2007/04 メディア: 文庫 購入: 55人 クリック: 588回 この商品を含むブログ (402件) を見る この間知り合いの女の子と飲みに行った時に薦められた本。 私もたいがい酔…

2.いらだち アラン「幸福論」より

人が喉を詰らせてしまったとき、体の中は大騒ぎになる。差し迫った危険がそこにあり、全身が警告を発しているような状態になる。筋肉はこわばり、激しい動悸がする。これはある種の痙攣である。さて、こういった状態にはどう対処すればいいのだろう?人はこ…

1.ブケファロス ~アラン「幸福論」より~

ブケファロス 小さい子供が泣いていて、慰めてみてもダメなとき、保育士は子供の性格についてすばらしいさまざまな仮定を立てる。いったい何がこの子供を喜ばせたり、不快にしたりするのだろうかと。もしかしたらこの子供の性格は、父親の遺伝なのかもしれな…

アラン「幸福論」を訳す

アランというフランスの哲学者がいて、「幸福論」という本を書いた。 結構有名な本なので、ご存知の方も多いだろう。 幸福論 (岩波文庫) 作者: アラン,Alain,神谷幹夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1998/01/16 メディア: 文庫 購入: 12人 クリック: 79…